2017年04月11日

桜。

近所に「一点豪華主義」なお家があって。


ごくごく普通な住宅の小さなお庭に、樹齢ウン十年の大きな桜。

太い幹は、当初の予定より育ち過ぎたらしく、塀を押し破って道路に少しはみ出している。

傍らには、「世田谷保存樹木」の看板。



そのお家のおばさんが生きてた頃、夜になると桜は綺麗にライトアップされていた。

白熱灯に照らされた桜は赤みが増して、暖かい色気を感じさせた。

この季節、私は夜な夜なそのお家の前まで行って、他人の持ち物であるその桜を愛でたものだった。

何十分も道路に立っていたので、相当怪しかったと思うけれど。

でも、私だけではなく、そこを通る誰もが立ち止まって上を見上げるほどの、見事な夜桜だったのだ。




数年前におばさんが亡くなり、息子さん達の代になってから、桜がライトアップされることは無くなった。

息子さん達はきっと、保存樹木だから仕方なく桜を切らないでいるだけなのだろう。




今、そのお家の前に行くと、冷たい街灯の光に青白く浮かび上がる、驚くほど大きな桜の木。

信じられないくらい沢山の花を咲かせ、もう持ちきれないのか、チラホラ花びらも散りはじめて。


以前のような暖かな美しさではなく、幽玄というか、むしろ凄惨な雰囲気が漂っている。

桜の木の生命力が、かえって不気味に思えるのが不思議だ。

人間ではないものが、そのなかに見えるような気がして。




それでも、いまだに夜な夜なそのお家の前に花見に行ってしまうわたくし。

ちょっとした恐怖を感じながら。




桜というのは、本当に不思議な花だ。


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posted by 花木さち子 at 03:57| 今日の1枚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする