2016年09月27日

隣のお家。

子供の頃、「ちいさいおうち」という絵本が大好きだった私は、大人になっても、なんだか家には人格が備わっているような気がしてならなくて。

隣のお家は、40数年前に清家清さんの設計で建てられました。
ご夫婦ふたりと大きな犬とで住むように設計されたその家は、子供の目から見てもとてもモダンで洒落ていました。
吹き抜けの大きな居間、天井までつながる本物の煉瓦の壁、南側の壁面は5メートルほども幅のある填め込みの分厚いガラスがこれまた天井まで続いていて。

でも、10年程経った時、ご夫婦は突然夜逃げをし、残された大きな犬は、近所の心ない人の通報で保健所へ。
(犬のことは未だに私の中でトラウマになっています。)
数日後から隣のお家は、ふたつの暴力団が権利を争い、ものすごいことに。
家の前の狭い道に、大きな黒塗りのベンツが何台も停まっていました。
私達家族は家中の電気を消して、隣からは見られないように恐々観察していたものです。

その抗争は、ある日突然現れた一人の小柄な韓国人のおじいさんによって終止符が打たれました。
おじいさんは何十人もの組員たちが見守る中、お家の玄関横に打ち付けられていた「○○会○○組」という立派な看板をメリメリと剥がし、何事もなかったかのようにお家に入っていきました。
たった一人で。

その後しばらくの間は、そのおじいさんが一人で住んでいました。
道で会うと、私みたいな子供にまで腰を90度に曲げて丁寧に挨拶をしてくれたおじいさん。
あの小柄なおじいさんの何処に、暴力団を一掃する力があったのか。
今でも謎です。

その後は、小学生の子供が3人いるご家族が住んだものの、数年後に離婚して一家離散。

最後は70代のご夫婦が買われて、でも住んだのはそのご夫婦ではなく、引きこもりの一人息子さん。
滅多に顔を合わすことのない、静かな隣人でした。

そのご夫婦が「家が売れたので。」とご挨拶にみえたのが先月。
あれよあれよという間にお家は取り壊されてしまったのでした。

あまり幸せではない歴史を刻まれた隣のお家。
どんな気持ちだったのかな…と、ふと考えてしまいます。

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posted by 花木さち子 at 20:46| 今日の1枚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする